「ちーす。」


「あ〜〜〜っ!!猿野だ〜〜〜!!」



お嫁においで



ここは黒撰高校野球部。
いつもどおりの練習をしている最中に、1年のパワーヒッター、村中由太郎が声を上げた。

最近気に入って大好きになった他校生の少年が居たから。


「猿野殿?」
「おっ猿野じゃねーか!相変わらずピーな体してんなv」
「下世話で野卑で低俗な発言は止めたまえ。
 可憐で美麗で清廉な猿野が穢れるじゃないか。」
「さるの……?」


部員たちも各々の反応を示す中。
当然のごとく監督のこのひとも反応した。


「おう、十二支の元気小僧か。」

すると、騒動の主であり十二支高校1年、猿野天国はまっさきにそちらに反応した。


「あ〜村中オヤジさん。よかったーすぐ見つかって。」


そしてまっすぐにそちらに向かっていった。


すると部員達もそれに自然とひかれるように監督の下にぞろぞろと集まった。


「なんだよ〜猿野、オヤジに用事か?」

「おう!チョンマゲ。ああ今日はうちのヒゲ監督からおめーんとこのオヤジさんにちょっとな。」

「羊谷監督から?では今日は親父殿に使いで…。」

「あ、おにーさんもこんちは。
 そうなんすよ。人使い荒くって…。」

「よー猿野!今日も桃色小町してっか〜?(意味不明)」

「エロ師匠!!今日も絶好調っすね!
 あとでまた語り合いましょうや。」

「こんな低俗で下卑た話でなくとも、もっと君に似合った高尚かつ毅然たる話題をもって私と会話という美しいコミュニケーションの形態を試してみないかな?」

「…すんませんワケわかりません貧乏っちゃまセンパイ…。」

「………やあ猿野……。」

「おっ沖〜〜今日も元気に自殺未遂してっか?」

「してないって…。」



4人いっせいに話しかけてくるのを、天国は順番に答えていった。
どこの学校でも人気者の天国はこういった状況に慣れてきているようで。
その様子は非常に滑らかだった。


「はっはっは、仲がいいなお前ら。」

それを見ていた村中監督は
自分の息子二人もこの元気な少年を気に入っているのをほほえましく思い。

ちょっとした悪戯心で、言った。


「どうだ、猿野。うちの息子のどっちかに嫁に来るか?」


当然冗談である。


「はあ?!何言って…。」


だから、猿野の素直な感想に 冗談だ、と言おうと思った。


思ったのだが…。


「オヤジ!!じゃあオレが猿野とばーじんろーどを歩くぞ!!」

「何を言っている由太郎!猿野殿は拙者と添い遂げるべきだ。
 お前ではまだ猿野殿を娶るには男として頼りがいがない!」

「ちょっと待てよ!俺だって猿野とピーしてピーしたいと思ってんだぜ?」

「村中家の嫁にと勝手に決められては彼も困るだろう。
 ここは我が緋慈華汰家の高貴な家訓において…。」

「勝手に決めないでよ…猿野が嫁なんてさ…。」


息子二人を含めた部員達は大騒ぎである。


そして全員。


まぎれもなく本気だった。


「お…おいおいお前ら…今のは軽い冗談…。」

「冗談…だったんだよなあ?」


言いだしっぺの村中監督と嫁候補の天国は完璧においていかれていた。


「なあ猿野!!オレの嫁になるよな?!」
「いや、拙者の伴侶として…!」
「違うよな〜、オレの奥さんになるよな?!」
「いやいや、私の清らかな花嫁…。」
「僕の…。」


5人はついに天国に詰め寄ってきた。



天国は、流石にやばいと思ったが。


哀しきかな、芸人の血が天国には流れていた。(違)



「いや〜〜ん、明美ってばモテモテvv」


突然明美化した。



「でもぉ、明美ってば将来を誓い合っちゃった人がいるから〜〜v」


「「「「「何ぃ?!」」」」」



でもやっぱり5人は食いついてくる。


「「「「「誰だそれは!!!」」」」」



「え…え〜〜っとぉ…。」



そして苦し紛れの明美は。


選んだ。



「魁おにーさまvvアタイをつれて逃げてvv」



「あ…!」


「「「「え〜〜〜〜っ?!」」」」



「猿野殿…拙者と…。」


「猿野ぉ〜〜!!にいちゃんより絶対オレのが楽しいぜ?!」

「カイちゃんじゃ固すぎるって!オレと一生遂げよーぜ?!」

「魁くんでは至らぬ点も多いのでは…いや、主将としては文句はないのだが…。」

「…僕じゃだめなわけ…?」

喜びを一身に感じ、天国の手をとる村中魁。
一気に落胆の色を見せつつも、あきらめはしないその他4人。



「皆、あきらめることだ。猿野殿は拙者を選んだのだから。」



勝者は。勝ち誇った笑みを見せた。




「あ…あのな…魁…?」

やっぱりまだ置いていかれていた村中父は、いつも真面目で冷静な長男に聞こうとした。



冗談じゃないのかと。



が。



「では親父殿!拙者はこれから猿野殿に結婚の誓いの指輪を購入しようかと思いますので、部は早退させていただきます。」


「え。」



「では、失敬!」



「ちょ、ちょっとおにーさん?!」



「か…魁…。」





どうやら長男の本気を、父はやっと理解できたようである。




##########


「アンタほんっと強引だったんだな…。」

「ふふ、あの時はな。周りが見えなかったのも事実だ。
 あの時は片想いだと思い込んでいたことだし…。」


魁は愛しい恋人…天国に口付ける。


「あの時はすんげー意外だった。
 試合のときの真面目でしっかりもんのアンタしか知らなかったしな。」

「拙者もあとから考えるとあの時は度が過ぎていたと思うがな。」



「あ…。」


「結果としてそなたを手に入れることができた。
 だから選択は間違っては居なかったと確信しているよ。」


魁は天国の手を取り、もう5年の付き合いになる恋人に微笑んだ。

手には、あの日の指輪がひそやかに光っていた。



                                     end


河合様、非常に遅くなって申し訳ありませんでした!!
本編はギャグ、最後だけちょっとほんのりしています。
オヤジさんが意外と大活躍で私もびっくりですが…。
それと緋慈華汰さんの修飾語は思いつかなくてすみませんでした…。


素敵リクエストほんとうにありがとうございました!
今ミスフル、他校生と仲良しなところがたくさん見れて楽しいですね…。
特に黒撰のみんなとは本当に仲良しなんで、とても嬉しいです。
華武の皆さんとも天国が仲良くなれる日を夢見ていますS.青沢でした。


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